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歌舞伎俳優 片岡愛之助の誕生 その2

古家氏

  下駄履いて ぶらりコンビニ 花形役者

 小学4年生の寛之は片岡千代丸という名前を貰い、秀太郎の父、十三代目片岡仁左衛門の部屋子として弟子生活が始まった。
 弟子の通常の仕事は、
 ①師匠より早く楽屋入りし、化粧台の周りを整える。
 ②楽屋入り口で師匠を「おはようございます」と迎える。
 ③草履を揃え、楽屋着(浴衣等)に着替えるのを手伝う。
 ④楽屋のれん口で控え、ご贔屓筋の訪問があると師匠に声をかけ、のれんをさっと揚げる。
 ⑤師匠のこしらえ(化粧、衣装の着付け)で、前に回り袴の紐を結んだり、帯の位置を定める。
 ⑥小道具や岡持ち(小物入れ)を持って、舞台袖口や花道鳥屋(とや)まで着いて行く。
 ⑦出番が終わると衣装を脱ぐのを手伝う。
 ⑧その他、師匠の外出のお供、出前取り、はばかりへは手ぬぐいを持って着いて行く。
 ⑨この間に自分の出番のこしらえもする。

 どの弟子もこのような絶対的な上下関係を、師匠に対する畏敬の念で納得している。寛之の場合、師匠が「きれい」「かっこいい」「すごい」で抵抗感はなかった。

 片岡家に部屋子として入門した寛之の最初に取り組んだことは、踊りのお稽古だった。歌舞伎の所作(動き)・形の基本は、舞踊にある。歌舞伎役者として舞台に上がる以上は、舞踊に根ざした様式美を体現しなくてはならない。

 小学校6年生で作文に「立派な歌舞伎役者になりたい。」と書いたが、「プロ野球選手になりたい」と気軽に書く生徒と特に差がなかった。
 中学2年生で初めて女形を経験。胸より上で締め付ける帯に「苦しかった~」衣装、鬘が重く「暑かった~」が思い出。
   P1000530千代丸中学2年
      千代丸中学2年生  後ろは秀太郎

  この間の周囲の大人たちの寛之に対する印象は、「礼儀正しいが、何も喋らない」
「師匠の楽屋にちょこんと座っている」「踊りの稽古は絶対に休まない。南座で夜の10時に楽屋の掃除を終えてから、豊中の師匠の家にまで来て稽古をする」
「大喰い」「喧嘩に強い」(注:早引きする生徒はいじめに遭うが、その対策として柔術を身につけ、さらに踊りで鍛えた体力もあった。)

 高校卒業真近になり母は悩んだ。寛之の役者としての才能は?才能があっても門閥中心の世界で何処までやれるのか?本人の将来のため大学へ進学させるべきか?母は寛之をこの世界に入れた片岡秀太郎に秘かに相談した。

 秀太郎も何ヶ月も悩んだ。「たしかに素質はある。このまま続けさせたい。しかし弟子ではおのずと限界もある。」当時秀太郎は子供が無かった。「あの子に賭けてみたい」「養子として迎え入れ、跡取りとしたい」寛之の師匠で秀太郎の父の仁左衛門も「あの子なら・・・」と二つ返事。

 寛之の父は「一生の仕事にする気なら、最善の環境に行きなさい」母は「あの子のためやから。本人が選んだ道やから」伯母は「松嶋屋(片岡家の屋号)さんのほうから熱心に言ってくださったのもあった」

 かくして市役所に養子縁組の届けが出され、山元寛之は片岡寛之に。片岡千代丸は片岡家の由緒ある名跡の六代目片岡愛之助に。寛之は19歳になっていた。(ただし、秀太郎の養子になっても、引き続き両親、妹と共に堺市の実家に暮らすことになった。)

 平成4年1月、松竹座で愛之助の襲名披露があった。秀太郎の替紋と同じ「追いかけ五枚銀杏」の紋入り手拭いや扇子、仁左衛門、秀太郎、松竹永山会長連名の挨拶文に配りものを添えて贔屓筋にご挨拶して廻った。踊り以外に、新に長唄の三味線、鼓、義太夫の稽古を始めた。御曹司ならすべて4歳から始めるものばかりである。

 長年の「その他大勢」の精神が染み付いていて、「モット前に出て」「自分を出して」と言われ続けた。それから2年後、名題試験にも受かり、一気に幹部に昇進、十三代目仁左衛門、実父母の死を乗り越えて、1回でも多くの舞台を踏もうと、貪欲に立役、女形どんな役でも喰らいついていった。

 愛之助30歳、時あたかも、上方歌舞伎塾が出来、父秀太郎が未来の歌舞伎役者を養成する任にあった。愛之助は塾卒業者らのリーダーとして、毎年平成若衆歌舞伎と称し勉強会を開いた。多分その頃だろう。
 「下駄履いて ふらりコンビニ 花形役者

 P1000536若衆歌舞伎
    2006年平成若衆歌舞伎 第5弾 「大阪男伊達流行」

 歌舞伎は江戸時代から続く演目を、代々、芸として受け継いでいく。愛之助は父秀太郎から学び、その秀太郎は父十三代目仁左衛門から学んだ。そしておそらく彼ら以前の諸優が作り上げた芸を我々は見ていることになる。さらにその上で、自分なりの工夫を加えていく。歌舞伎とはこうした重層的な、生きた芸能であって、単なる見得や台詞の節回しといったデイテールのみを受け継いだものではない。「継承」と「創造」の二つの精神の取組なのである。

6月3日~24日 国立劇場 「鳴神」*
7月3日~27日 大阪松竹座 「双蝶々曲輪日記」他
9月3日~23日 大阪松竹座 「花の武将 前田慶次」*
11月5日~10日 永楽館(出石市) 大歌舞伎*
* 印:主役
以上発表されている最近のスケデュール 
(参考文献…松島まり乃著「歌舞伎修行―片岡愛之助の青春―」日本放送出版協会)

 P1000554愛之助近影
    愛之助近影
  P1000557徳川綱豊卿
 元老忠臣蔵「浜御殿豊綱卿」徳川豊綱卿 平成22年1月 浅草公会堂

   文末お願い文
 
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