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歌舞伎俳優 片岡愛之助の誕生 その1

  古家氏
 
  下駄履いて ふらりコンビニ 花形役者
 
 数年前の我家の食卓の話題。女房が「愛之助とか言う歌舞伎の役者さん知ってる? なんやセブンイレブンへよう下駄はいて来はるらしいよ」とにかく一遍家を見に行こうと捜した結果、堺市の我家から歩いて10分くらいのところに、普通の一戸建てで表札は「山元寛之」とありました。「ふ~ん 山元さんか~」
 
 本年3月6日から26日まで、日比谷の日生劇場で「染模様恩愛御書」(ソメモヨウチュウギノゴシュイン)という通し狂言が掛かっていた。しかしいつもと違う珍しいことが起こった。ポスターを売ってほしいという人が増えていき、ついに増刷するまでに至ったのだ。主演は東西の人気役者、市川染五朗と片岡愛之助。
 染め模様
  染模様恩愛御書のポスター 愛之助はお小姓姿

 4月30日、歌舞伎座閉場式で歌舞伎俳優の幹部と名題181人が、舞台に勢揃いして「手締式」を行なった。片岡愛之助も2列目左から10番目にいる。歌舞伎俳優は全部で300名、うち幹部が110名、名題が72名、名題下が118名。(2010年版「かぶき手帖」より数えた。)

  手締め式
   歌舞伎座閉場式に於ける手締め式の模様

 幹部とはいわゆる御曹司で代々歌舞伎役者の家系を継ぐ人々である。他は幹部の弟子筋にあたり、名題試験に合格したものが名題、まだのものは名題下である。幹部の中で御曹司でない普通の家庭に生まれた者は極く稀れで、愛之助はその一人である。ご存知の通り、歌舞伎界では幹部のみが主要な役どころを勤める。

 1972年3月4日幼名山元寛之は利光、操子夫妻の長男として堺市に生まれた。家は工場地帯で、目の前は久保田鉄工の工場。祖父は船のプロペラを製造する工場を経営し、実家はその横に建っていた。父も祖父の工場で働いていた。家の前は、ひっきりなしに走るダンプカーで、妹とともに家に閉じこもる内向的な少年へと育っていった。

 5歳に転機が訪れる。少年野球やサッカーのチームが近くになかったので、両親は友達を作る機会を求めて、松竹芸能の子役オーデイションを受験させた。実は父は、高校時代、映画のニューフェイスに合格したことがあった。そういうことも少しは影響していたかもしれない。毎週土曜日に道頓堀の松竹芸能の稽古場に母に連れられて通うことになった。そこでは大勢の友達と遊ぶことが楽しかった。

 初めて「お仕事」の話があったときは、「一生に一度の記念になるから出てみたら?」と言われ、軽いノリで出かけた。NHKテレビドラマで藤山直美主演の「欲しがりません勝つまでは」で、デイレクターの「ここからあすこまで凧をもって走ってね」で無事終わった。

 三宝小学校1年生の時、中座で初めて歌舞伎に出た。この時も歌舞伎を一度も見たことがなかった両親が「あの難しいお芝居やろ?素人が出させていただけることなんて滅多にない」再び「一生の記念や」で挑戦することになった。出し物は「源氏店」の丁稚役で、セリフはなく20秒の出番であった。舞台に出るタイミングや歩く早さが難しく、一緒に出ていた主人役の役者が親切に教えてくれ、一緒に記念写真まで応じてくれた。後に叔父となる十五代目片岡仁左衛門(当時孝夫)であった。

 3年生で南座の顔見世に出て「勧進帳」の富樫の太刀持ち役を勤めた。数十分間は太刀を持ち座り詰めである。右腕は感覚がなくなり、足は痛くなる。何よりも退屈で眠くなる。しかし寛之は他の子役と違い、ずっとおとなしく座っていた。何日も何日も。実はその間、弁慶や富樫のセリフを意味が判らないまま憶えてしまい、いつもその役者と心を一つにして台詞を言っていたのだ。この時、「勧進帳」を観ながら太刀持ちの子役に注目する人がいた。そのときの弁慶役の片岡孝夫の兄、女形の片岡秀太郎であった。
  山元寛之訓の太刀持ち
  山元寛之君の太刀持ち

 4年生頃にはかっての引っ込み思案の子供も、しっかり挨拶できる子になった。しかし授業についていけないことがしばしば起こった。歌舞伎に出演している時は、2時間目で早引きするからである。家族会議の末、松竹芸能を辞めることを決め、会社にも了解を得た。しかしその時、片岡秀太郎と母との運命的な出会いがあった。「あの子は役者にしないの?」「実は今月でやめるんです」「えっ・・・・・。そんなこと言わんと改めてお話しましょう。」

 後日、秀太郎の計らいで、秀太郎の父の片岡仁左衛門(十三代目)の部屋子となり、片岡千代丸という名が与えられた。部屋子というのは一般の弟子とは違う。他の弟子は大部屋に入るが、師匠と同じ部屋に入って修行をする。9歳の秋、寛之の役者修行が始まった。(続く)

    文末お願い文
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予想外の展開で歌舞伎役者を身近に感じています。目下興味を持っているのは「名門」といわれる家の歴史と、個々の俳優の生い立ちなどです。お陰で興味がうんと広くなりました。
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